リサイクルアート
ホッキョクグマ
コロナ禍により、毎年舞台用に何かしら作っている大きな製作物を作る機会に恵まれませんでした。

そんな中、「リサイクルアート展」というものを知り、「やったらいいしょ」という数多くの声に押され、いざ作ることを決意しました。

リサイクルアートというと、廃材を使って何かを作るものですから元々の形状や色などが反映された方が面白いですよね。

ペットボトルのキャップを大量に並べるとか、ペットボトルを切り貼りするとか……なんて考えていましたが、やはり見る人に訴えかけるのは数の暴力と言いますか、想像できないくらいの手間を一目で見せることかなあ、と思考を巡らせていきました。

そこで、シュレッダーのごみを使って何かを作ろうと思いつきます。最初は、ティラノサウルスが気になっていたので候補に挙げていましたが、どうも質感が違います。では、一体何がぴったりくるのだろう……と考えた結果、シロクマだ!!と思いつきました。

紙粘土で縮小モデルを作り、ティッシュペーパーに木工用ボンドでシュレッダーのゴミを貼ってテストをした結果、いけそうだと判断し、倉庫にあった廃棄する予定だったダンボールを並べてみました。
ダンボールで土台を作ります。

これも車庫のダンボール置き場に積み上がっていたものなので、完全に廃材です。
ダンボールの端材で丸みを出していきます。

足は3本でバランスを取れるように配置しているため、右腕は別に作ります。
右腕を取り付け、肩にも膨らみを出していきます。
紙粘土のモデルを見ながら、首が自然なカーブとなるようダンボールを繋ぐ位置を調整していきます。
足部分もできて、ダンボールでの作業が終わりました。
次に、新聞紙で表面を覆っていきます。そのままではダンボールのカクカク感がありすぎるので、中には丸めた新聞紙を綿のように詰めています。
ここから、ひたすらシュレッダーのごみを使った毛皮作りです。

試しに左脇腹に両面テープを貼り、シュレッダーのゴミを直接貼り付けていきましたが、相当時間がかかり、既に完成までの総作業量に頭を抱えています。

そこで、直線部分はA4サイズの新聞紙にシュレッダーのゴミを貼り付け、そのシートを貼り付けるようにする作業と、直接貼り付ける作業に分けることにしました。
腕の下の方や脇腹は直線的な毛並みですが、肩の部分や背中部分は曲線になるので、毛並みの向きを矢印で描き、自然に繋がるようにします。
北海道とはいえ真夏はかなり温度が高かったので、汗だくになりながら車庫で作業をしていました。

やってもやっても進んだ気がしない、気の遠くなる作業です。
前から。

頭部は全体が落ち着いたら進めます。
上から。

肩の付け根と、お尻の厚みにこだわりました。
後ろから。

足が短いというよりも、お尻がドーンとある感じを目指しました。
顔はまだですが、完成までわくわくしながら毎日作業をしていました。
背中の毛並みは中央部分から枝分かれしていくので、自然になるようよく考えました。
作業に慣れてきたので、別に作るシートも、毛並みの矢印を描けばできることが分かりました。

やはり、クーラーの効いた室内の方が快適です。
割と覆われてきた段階です。

毛皮を作る作業にも疲れてきたので、この辺りで頭部を作り始めます。
頭部の箱を絞るようにし、鼻部分は別のダンボールで箱状にしてクマの輪郭を作っていきます。
少し窪む目の部分に赤いダンボールを配置すると、黒いガムテープを使っていたこともあり、悪役になった感じに。
ダンボールで耳を付けたり、頬の膨らみを出したりしたことで、大分それっぽくなってきました。
新聞紙で覆います。

目と鼻のイメージを、新聞紙に黒いガムテープを貼ったシートを使って考えます。

実物を意識した目。

眠そう。
赤ちゃんシロクマをイメージすると三角形な感じに。

かわいいけれど、体格の割に幼すぎるかも。
目や鼻などの黒い部分にも、シュレッダーのゴミを使います。

目の形が決まったので、後日作業をするように水に浸けてふやかしておきます。
顔ができたら一気に完成が見えてきました。

しかし、実際には作業量はまだまだあります。
一気にかわいらしさが増しました。
この角度から見るとほぼ埋まっていますが、反対側は全然できていません。
おしりは立体的なので別のシートが貼れず難航しています。
3日間くらい放置してふやかしたシュレッダーのゴミに木工用ボンドと黒い水彩絵の具を混ぜて、自作の紙粘土を作ります。
分量がよく分からなかったのですが、シュレッダーのゴミはふやかしても原型を留めていたので、結構使いました。
ボッソボソで、質の悪い紙粘土という感じになりました。
どうにか成形して、目や鼻、肉球と爪として接着していきます。
耳の中にも付けました。

目や鼻を避けて毛を貼り付けていきます。

顔はかなり毛並みが複雑なのですが、これまでの大味な感じとは違う作業で、新鮮でした。
耳の黒さを際立たせるために、ギリギリまで毛を貼ります。
顔も終わり、このアングルならば完成まであと僅か!という感じですが、やはり反対側はまだ新聞紙のままなので全然終わりは見えていないのです。
角度を変えると、まだまだな感じがします。
ほぼ終わっている感のある奇跡のアングル。
下から見ると作業しづらい上にまだ終わっていない絶望感。
爪先は、シュレッダーのゴミ紙粘土で作り、その周りをシュレッダーの毛で覆っていきます。

ちまちました作業です。
作り始めた当初は、50時間ぐらいで作れるだろうと思っていたのですが、全然終わりませんでした。

70時間を過ぎたころから、見かねた妻が手伝ってくれ始めました。

感謝。
このA4サイズの毛皮1枚を作るのに、約1時間半かかります。ですので、1日2〜3枚が限度。最大で6枚ぐらい

110時間を過ぎたころから、両親にもお願いしてA4サイズ6枚分を外注しました。感謝。
反対側。

ダンボール箱で底上げして作業をしています。
継ぎ接ぎなお尻周り。

最終的には、両面テープを
・半端に残っていたのを使いきり、
・20mm×20mを3つ
・40mm×20mを2つ
・50mm×10mを1つ
・40mm×4mを7つ
・15mm×20mを1つ
・15mm×15mを1つ
・30mm×5mを1つ
と物凄い量使いました。
完成
横幅85cm×全長145cm×全高100cm、重量7.5kgの大きなリサイクルアートのホッキョクグマが完成しました。

ここに掲載しているのは、リサイクルアートコンテストに送った写真と同じものです。

発想力・表現力・技術力・メッセージ性が審査の対象だったので、シュレッダーのゴミをひたすら貼り付けるという作業量の多さで勝負しました。ですが、一次審査を通らず、落選してしまいました。
「シロクマさんに会いたいな」という題名で応募しました。送った作品コンセプトをそのまま掲載します。

○作品コンセプト
「パパ〜、円山動物園に行こうよ!」
「今はコロナでお休みなんだってさ」
「そっかあ、シロクマさんに会いたかったな……」
という4歳の娘の呟きがきっかけです。

車庫にあったダンボールを組み合わせ、新聞紙で覆い、シュレッダーごみを毛に見立てて貼ることで、ホッキョクグマ(通称シロクマ)が生まれました。
シュレッダーごみは、紙の繊維が細いのでリサイクルすることが難しいものです。ホッキョクグマは、温室効果ガスが大量に排出されると、2100年までに絶滅してしまうという研究もあります。シュレッダーごみでホッキョクグマを作るというアートにすることで、資源を大切にして、地球の未来を考えるきっかけに少しでもなれば、という願いを込めました。
アピールポイント

娘と一緒に読んだ本で知った「ホッキョクグマの肌は実は黒い」ということに着想を得て、新聞紙が見えなくなるようにひたすらシュレッダーごみを貼り付けました。A4サイズの毛皮1枚を作るのに約1時間半かかり、ここまで覆うのには150時間超かかっています。本物に見えるよう毛並みの向きにも気をつけました。目や爪の黒い部分は、水でふやかしたシュレッダーごみに木工用ボンドと絵の具を混ぜた手作り紙粘土を使っています。動物園に遊びに来るのを楽しみにしているよ、と手を挙げているようなユニークなポーズにしました。
材料: ダンボール、新聞紙、シュレッダーごみ

……という感じで応募しました。
顔のアップ。

目にはニスを塗ったので光を反射してツヤツヤとした光沢のあるかわいい感じになっています。

何度も重ね塗りした甲斐がありました。
ちなみに、160時間の段階で締切が迫っていたので撮影をしましたが、万が一審査を通って実物を搬送することになった時のために、反対側の作業も進めていました。

そもそも完成していないのに写真を送ることになったのですが、こんな作業量の多い作品はもうこりごりです。

プラス40時間の計200時間で完成ということにしましたが、結局意味がなかったことになり、残念。
まあ、そんな妻や親を巻き込んでこの夏の自由時間をほぼ全てつぎ込んだこんな作品ですが、娘たちには好評でした。

「シロクマさん、できてきたね!」と車庫に行く度に喜んでくれていたので、いい思い出にはなりました。

強度的には大丈夫なものの、上に乗るとバランスが取れないので、裏で妻が支えています。

4歳半の長女はノリノリでピースをしていますが、1歳半の次女はさすがに泣き顔でした。
最後に、家族写真。

前に作ったダッフィーパーカー&着ぐるみ90cmを着て、クマ繋がり。

入賞しなかったのは残念でした。あわよくば、賞金100万円を狙っていたのですが、他の方の入賞作品を見ると、とってもアートな感じだったので無理もないですね。

まあ、いいチャレンジでした、自分。
追記 解体
大型の造形物が車庫にずっとあっても場所を取るので、冬が明けて春になったところで解体することにしました。

まずは、カッターナイフで腹をかっさばいていきます。
このシロクマを作るのにはとても時間がかかったので、タブレットでアマゾンプライムやユーチューブを再生しながらやっていました。

地上波ではできないことをやることがコンセプトの「カリギュラ」なんかも流していたのですが、この時の気分は「東野幸治、猪を狩る」の気分でした。

なかなかこんな大きな動物を作らないですもんね。

5歳と2歳の娘たちが車庫の少し離れた場所で遊んでいる中、自分はガッシガッシ切っていたのですが、ちょっと2歳の娘は怖がっていました。

そりゃそうですよね。反省。
一応解体をしやすいようにダンボールでの骨組みはシンプルな分かりやすい作りにしておいたので、お腹を開けばどんどんバラしていけます。
ダンボールの周りを毛皮で覆っていただけなので、繋がっていた毛皮をうまく剥がすことでダンボールが簡単に露出します。
まるで本物の毛皮のように、綺麗に剥ぐことができました。

お金持ちの家にあるような動物の毛皮ができました。

コンクールに応募するために200時間かけて作ったものの、解体するところまで普段やったことのない大規模なことができたので、貴重な体験となりました。
5歳の長女は被って遊んでいました。

なかなか毛皮を被る機会なんてないですよねえ。
ゴミに出す前に、頭部の毛皮を頭に被ってみました。

「鬼滅の刃」の嘴平伊之助のようになりました。
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